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魅惑のサイフォン

[カテゴリ]
いれ方・技術
[著者]
馬場 通博
[掲載年月]
「月刊 珈琲人」 2004年12月号(珈琲究人[こーひーきわめびと]シリーズより)
繊細な指先が竹べらを操って、ひとかき、ふたかき・・・。
フラスコに映る自分の影とお湯の揺らぎを見つめていると、まるで手品のようにコーヒー液が降りてくる・・・。
美味しさもさることながら、演出効果の高さは、さまざまな抽出方法の中でもピカ一。

科学室の棚に並ぶ実験器具にも似たフラスコやアルコールランプを使って、自分もおいしい一杯をいれてみたいと挑戦意欲を掻き立てられた人もいるはず。

今回は“美しきコーヒーショー”を実演してみたいあなたへ贈る「サイフォン入門」です。
■ サイフォンとは
液体の流れ
使っているところを見たことはあっても、どのような仕組みで抽出されるのか知らない方も少なくないのでは?

ごくごく簡単に説明しますと、(1)フラスコ(下ボール)に入ったお湯が加熱されて、ロート(上ボール)に押し上がり、(2)コーヒー粉とお湯が接触しコーヒー液となったのち、フラスコに戻ってくる・・・といったもの。フラスコとロートをしっかりと密着させることで密封に近い状態を作り、気圧の変化を利用して液体を操るので「バキュームコーヒーメーカー」とも呼ばれます。

19世紀のサイフォン(イギリス製)
もともとの原型はイギリス人が開発したバキューム方式の抽出器で、それがフランスでさらに改良、開発されたと言われています。

写真は19世紀のサイフォンですが、右側の陶器に水、左のガラスにコーヒー粉を入れて使っていました。
■ サイフォンのパーツについて
具体的な使い方を解説する前に、器具の各パーツについて説明しましょう。

通常は写真のような部分が1セットとして販売されています。今回は一般的に販売されているハリオ製サイフォンを使用します。サイフォン器具にはサイズがありますので、1度に何杯分を抽出できる器具か確認して使って下さい。

●ロート(上ボール)
こちらにフィルターをセットして、コーヒー粉を入れます。下のフラスコに差し込む“足”の部分が細い筒状で破損しやすいため、洗う時などは細心の注意が必要です。

●フィルター(ろ過布)&ろ過器
フィルターを、ろ過器(ろかき)にセットして使います。フィルターはネル地なので、前回紹介したネルドリップ同様、最初に使う時にはコーヒー液で煮て布臭さを取ります。清潔に保つため、使用後はよく洗い、水に浸けて冷蔵庫で保存します。適度な使用期間で交換するようにしましょう。

●フラスコ(下ボール)
表面に水滴がついたまま火にかけると割れてしまうので、使う前によく乾拭きします。口が小さいのでこちらも洗う時には注意しましょう。また、スポンジの硬いもので洗うと小さなキズが加熱した時の破損の原因にもなるので注意しましょう。

アルコールランプ
お湯を沸かすための熱源です。種類は色々あるようですが、UCCが開発した「光サイフォン」のように、炎ではなく、車のヘッドランプで使われるハロゲンランプを熱源としたものもあります。主に業務店で使われますが、光が美しいのでさらにムードが高まります。

●へら
プラスティック製や竹製のものがあります。ロートの中で混ぜるので柄が長くなっています。
■ 基本のいれ方
コーヒー粉とお湯の量は、コーヒー豆の焙煎度合いや好みによって調整します。科学の実験と思って、色々試しながら好きな味を見つけて下さい。

=材料:1杯分あたり=
出来上がりが一般的なコーヒーカップ1杯分(130〜140ml)に仕上がるようにします。
●コーヒー粉・・・10g〜20gまでが許容範囲
●お湯・・・・・・・・・目安は160ml
※コーヒー液の濃度と味のバランスで挽き方と使用するコーヒー粉の量を調整して下さい。

[馬場氏おすすめの分量] UCCスーパーアロマ オリジナルブレンド使用の場合
一般的なカップ1杯分    :コーヒー粉15g/お湯 160ml
たっぷりめマグカップの1杯分:コーヒー粉 20g/お湯 220ml

1 湯を沸かす

フラスコへ、杯数に合わせた分量のお湯を入れ、ランプで沸かします。水滴がついていると割れる危険性がありますので、火にかける前に、必ずフラスコの外側を乾いたふきんでよく拭いておきましょう。

2 ロートにフィルターをセットします

フィルターをつけたろ過器のバネの部分をロートの細くなっている部分に通し、先をひっかけて固定します。
この時、ロートの中でフィルターが水平になっていること。ここが水平になっていないと横からコーヒー粉の粒子がもれクリアなコーヒー液になりません。

3 コーヒーをいれます

フィルターをセットしたロートにコーヒー粉を入れます。 コーヒー豆の挽き方はコーヒー豆の使用量と出来上がる味のバランスで決定します。家庭用のパッケージ製品は、ほとんど中細挽きになっていますので、サイフォンならそのまま使えます。いれたい杯数分のコーヒー粉を入れておきます。

4 フラスコにロートをセットします

お湯が沸騰したら火力を弱め、お湯の表面が鎮まったところへ、コーヒー粉の入ったロートをフラスコに静かに差し込みます。勢いよく差し込むと湯が噴出すことがあるので十分注意します。ガス、光サイフォンの場合は火力の調整が可能ですが、アルコールランプはその都度できませんので、あらかじめ時間がかかっても弱火にしておくことが美味しさの重要なコツになります。サイフォンの抽出は、火力に大きく左右されます。
お湯は蒸気圧によってフラスコからロートに上昇します。

POINT!
ロートを差し込む際には、お湯が絶対沸騰している状態でないとダメ。
お湯が完全に沸いていない、60℃程度でも、差し込むとじわじわ上昇してしまいます。
その低めの温度のお湯に長い時間「コーヒーが浸る状態」にあれば、もちろんおいしいコーヒーは出来ません。

5 攪拌します

湯がロートに上昇したあとの火加減は、フラスコに炎の先端があたる程度に調節して下さい。フラスコ内にあったお湯がロートに上がってくるので、へらでロート内の上部のコーヒー粉を攪拌します。

この時の“粉のほぐし方”で味の良し悪しが大きく変わってきます。ロート内全体を攪拌するのではなく、浮いている粉を軽くほぐすつもりですばやく2〜3回円を描くようにします。ほぐす程度を意識しすぎて撹拌が弱く不完全になったり、逆に混ぜすぎてコーヒーのおいしくない部分も引き出してしまう場合もあります。難しいでしょうが、これを見極めるポイントを教えてくれるのが。「気泡」です(ドリップと同じだ!と感激されている方はもう珈琲究人の弟子の一人ですね)。均一なブラウンでクリーミーな泡が表面に出ているかどうかをチェックしましょう。

攪拌の目的。
撹拌することで、コーヒーの組織の中にお湯を浸透させ、効率良く抽出するための準備をします。(ドリップの蒸らしと一緒だとピンときた方、正解です!)コーヒー粉に含まれているガスがお湯の浸透を邪魔するので、攪拌することによって助けるわけです。

POINT!
ロート内のお湯は絶対に踊らせてはダメ。 火加減が極端に強すぎたり、
フィルターとロートが密着していないとお湯が踊ることがありますが、
ロート内の温度の急上昇は味に悪影響を及ぼすのでくれぐれも注意してください。

6 抽出〜2度目の攪拌について

火力を弱火の状態にしてロート内の気泡の状態を見ながら待ちます。1分以内に火から外し、[5]と同様のやり方でもう一度軽く攪拌したら、コーヒー液がフラスコに落ちるのを静かに待ちます。

1分以内が大切。
ロートを差し込んだとき、ロート内の温度は90℃前後ですが、約1分以内でほぼ100℃に上昇してしまいます。100℃の状態でコーヒーを抽出すると香りがなくなり、コーヒーのおいしくない成分も充分に抽出されてしまいます。1度失敗するとその違いがわかるかもしれません。

2度目の攪拌はしないと言う方もいるかもしれませんが、主な目的は理想的なろ過を行うためです。ロート内のコーヒー粉はまだガスを含んでいるので、攪拌をしない場合、ガスの少ない小さい粒子が先に沈んでフィルターなどの隙間を通ってフラスコ内に入り込み、舌触りの悪いコーヒーになってしまいます。攪拌して残存のガスを抜いてあげる事で、ガスを多く含んだ浮力の強い大きい粒子が先に沈み、小さい粒子がその上に重なり、コーヒーかすのろ過層をつくってくれます。 (これもドリップと同じ原理でしょう。“むむむ”と思う方はペーパードリップ、ネルドリップの回を復習してみてください)。

こうしてできたろ過層は吸引力の関係によりきれいなドーム状になります。写真の抽出例とあなたのいれたコーヒーかすを比べてみて下さい。
 
良い抽出   悪い抽出

コーヒー抽出の原理は、ドリップ、サイフォン、エスプレッソなど器具は違えど、どこかでつながっている事がわかると俄然面白くなってきますよ。

珈琲究人・馬場より 抽出チェック項目!
1.火加減はどうか
2.撹拌による気泡はどんな状態か
3.抽出時間(撹拌後から2度目の撹拌まで1分以内か)
4.ロート内のコーヒーかす層がドーム状になっているか  ※写真とイラストを参照
5.滑らかでおいしいコーヒーであるか(試飲)

いかがですか?ちょっと説明が長くなりましたが、サイフォンのいれ方はわかりましたか?
サイフォンは、ペーパードリップやネルドリップよりもやや高温での抽出になりますが、割とあっさりとした味わいに仕上がります。使うコーヒーも選びませんので、分量を変えながら、自分の好みの味をつかんでみて下さい。

クリスマスパーティの夜、ロウソクの灯りとともに流れるような動きでおいしい1杯をいれられたら・・・もう最高に盛り上がることは、間違いない!
【究人(きわめびと)に聞きたい】
サイフォンの魅力はどんなところにあると思いますか?
見て楽しめる美しきコーヒーショーと言う感じでしょうか。
出来上がるまですべてが演出です。
また、客席でフラスコから注がれるサービスの瞬間の作り手と飲み手のほどよい緊張感がコーヒー店にとっては醍醐味ではないでしょうか?
究人語録 file no.8
「コーヒーを食後にいれるお父さんには、威厳と風格が与えられる。」

また冬が来ました。窓からこぼれてくる温かい光の中に、コーヒーカップを持ったお父さんであろう人影とともに家族が見える。今日は早く帰ろう。そしてコーヒーでも食後にいれてみようか?そんなお父さん達にコーヒーはいつも威厳と風格を与えてくれる事でしょう。
・・・などと自分に言い聞かせる・・・残念!

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